カルト問題相談窓口 心の相談室りんどう

カルト被害の事例集です。
*ここに紹介した事例は複数の事例を組み合わせ個人の特定ができないようにしてあります。

 

 

事例1

 

Bさんは50代の主婦。

 

ある日、見知らぬ中年女性が、Bさんの自宅に印鑑を売りにやってきた。

 

断ろうとするBさんに青年がポツリと言った。「今日はだれかの命日じゃないですか?」

 

このひとことがBさんの心を強くとらえた。

 

今日は義母の月命日であったからだ。

 

「奥さん、なにか心配事はありませんか?」

 

柔らかな物腰に、心配そうな顔。

 

Bさんは玄関に座り込んだ、青年に「心配なこと」を話してしまった。

 

息子の不倫が発覚し、不倫相手の夫から慰謝料を請求されていること

 

田舎の弟が交通事故で足を骨折し、入院中であること。

 

夫が会社で配置転換になり機嫌が悪く、何かにつけてあたり散らすこと。

 

最近は心労のため、疲れがたまってしまい、夜眠れないこと。

 

青年は大きくうなずきながら、ときには相槌をうち、親身に話を聞いてくれた。

 

ひととおり話し終わると、青年は印鑑のことは口にせす、こう言った。

 

「あなたは一度、家系図を見てもらったほうがいいかもしれませんね。私は高名な霊能鑑定士を知っているので、ぜひ一緒に行ってみませんか?」

 

数日後、Bさんは青年に言われたままに、紹介された「高名な霊能鑑定士」の元を訪ねていった。

 

「武士の、お国のために尽くされた、すばらしい家系ですね。でもちょっと気になるところが・・・・」

 

「女系家族のままだと、男は早死にする」

 

と霊能鑑定士。

 

「あなたの家族の中に道ならぬ色情に溺れている方はいませんか?」

 

「事故にあって苦しんでいる方が見えます、心あたりはありませんか?」

 

この霊能士の言葉にBさんは衝撃をうけてしまった。

 

「どうして、今日はじめて会ったはずなのに、この霊能士には息子の不倫のことがわかるのだろう?」

 

霊能士は話を続けた。

 

「あなたの七代前のご先祖様に殺傷の因縁があり、その時の殺傷の因縁があなたの運気を妨害しているのです。殺傷をしたあなたの先祖もその時の因縁で地獄の底で苦しんでいます。」

 

霊能鑑定士の声は次第に凄みを増してくる。

 

「あなたは最近体調が悪いでしょう?夜も眠れないんじゃないでしょうか?」

 

これも当たっていた。

 

「ご先祖さまの殺傷の因縁が、あなたの健康を害しているのですよ。」

 

それによく見ると、ご先祖様には色情の因縁があるようですね。この因縁も息子さんに悪い影響を与えていますね。」

 

Bさんは心底恐ろしくなった。ガタガタと震えはじめたBさんに追い打ちをかけるように、霊能者は話しを続ける。

 

「このままではあなたは体調を崩したまま死にます。あなただけではなく、家族の皆さんも早死するか、事故に遭うかです」

 

「先祖の因縁を清めるために、一日5千円の祈祷を百日間続けなければならない。そのためには総額の50万円を一括で払ってください」

 

そして、霊界で苦しむご先祖様を救うためには、あなた自身が、霊能者となり、悪因縁を断ち切らなければなりません。

 

霊能者として、家族とご先祖様を救うために、私の道場で修行をはじめてください。

 

その道場は飲み屋の2階にあった。

 

どうもその飲み屋も霊能鑑定士が経営しているらしい。

 

Bさんは霊能者になるための修行と称して、飲み屋のチラシ配りや皿洗いなどの雑用をやらされることになった。

 

夕方の3時から深夜2時までの無償労働だ。

 

Bさんは50万円をだまし取られただけではなく、修行と称した労働搾取の被害にもあっている。

 

 

事例2

 

C子さんは30代の主婦。サラリーマンの夫と小学生の子供の三人暮らし。近くのスーパーでパートをしながら子育てを頑張っていた。

 

ある日、短大時代の友人から、「幸せになる方法がある」と誘われて、仏教系新宗教X会に入信した。

 

毎日、朝と夕方にお経を唱え、親戚、友人はもとより高校、中学、小学校時代の同級生までかたっぱしからX教団へ勧誘し、毎週日曜日には子供を連れて教団の集会に参加するようになった。

 

「私たちの教学を信じないものたちには罰があたる。地獄に堕ちる」

 

「私たちの教学を広めていかなければ、日本は滅びる」

 

あまりにも強引な勧誘や荒唐無稽な教学を押し付けるため、パート先をやめるはめになり、古くからの友人たちもC子さんとは距離をおきはじめた。

 

夫の実家の法要や、墓参りには参加しない。
お世話になっていた恩師の葬儀にも参加しない。

 

最近は子どもが修学旅行に行くことにも反対している。
修学旅行先で「有名な神社に行く」ことが決まっているからだ。

 

「神社に行って鳥居をくぐったりすると罰があたり地獄に堕ちる」というのが理由である。

 

事例3

 

A子さんは40代の主婦。「ヨガ無料お試しキャンペーン」のチラシにつられて、近所にある
ヨガ教室に入会。最初の一か月くらいは何事もなく、スタジオで汗を流していた。

 

ある日、スタジオのトレーナーから、「Aさんには他の人にはない『いい素質』がある。今度『選ばれた人』だけを対象にした『心の真実を見つけるセミナー』があるので参加してみない?」と誘われた。

 

費用は一泊二日の研修で2万円。

 

興味をひかれたAさんは、参加を決め、セミナーに参加した。

 

セミナーの内容は「赤黒ゲーム」のように自己啓発セミナーではおなじみの方法のほか、「私は強い」などと叫びながら、涙や汗をたくさん流し、死ぬ気でダンスをやったり、マットへの体あたり取り組んだ。

 

セミナー最後の「わかあちあい」や「反省」のあと次のセミナーの勧誘をうける。今度は沖縄で2泊3日で総額30万円。

 

気分が高揚しているA子さんは参加を即決。

 

 

沖縄でのセミナー参加後、「南米大陸の聖地訪問」や「オーストラリアへの精霊巡回の旅」などA子さんのセミナー熱はエスカレート、参加のために費やした費用は総額で900万円にも上った。

 

何度かのセミナーを経験したA子さんはすっかり人格がかわってしまったようだ。

 

心配する家族が、セミナーことを批判したりすると、肩をいからせ、目をらんらんとさせてヒステリックに喚き散らす。

 

同時に「私は救世主として宇宙生命を救う。」、「救済者として我が家をカルマから解放する」など異様な言動も目立ちはじめた。

 

ある日、A子さんは突然家を飛び出した。
ヨガ教室のスタッフとしてスタジオに泊まり込み、「救世主」としての修行を始めたのだ。

 

やがてA子さんは家をでてヨガ教室のスタジオで寝泊まりをはじめた。
ヨガのインストラクターのほか、事務仕事や掃除などの雑用・・・一日の勤務時間20時間近くにのぼる。

 

今の生活は「宇宙を救う『救済者』になるための修行なのだという。

 

事例4

 

B子さんは30代の専業主婦。20代中ごろに「うつ」を経験し、それ以来なかなか元気になれない。

 

ある日、親戚の叔母さんから「ハンドパワーで万病を治す」と謳いあげるX道場を紹介される。
「そんなうまい話しがあるものか」と思ったが、叔母の熱心な薦めもあり、X道場に出かけてみることにした。

 

「あなたが長い間、『うつ』で苦しんできたのは、あなたに悪い霊の曇りや毒素がたまっているからです。」
X道場の道場主がおごそかに話はじめた。

 

「これからハンドパワーを使い浄化をはじめます。こうすればあなたに毒も溶けていきますよ」そう言って道場主は手のひらをB子さんのひたいにかざした。時間にして10分くらいだろうか。

 

でも、確かにすこし気分が軽く、楽になれたような気がしたのだ。

 

このハンドパワー施術料が、3万円。
少々高いが、これだけで済めばよかった。

 

B子さんは次第に頻繁に道場に通うようになった。道場の清掃や事務などを手伝っているようだ。そういった活動は「奉仕」とされ、アルバイト料金などは支給されない。

 

確かに「うつ」は良くなったように見える。いつも溌剌として元気いっぱいだ。それはそれでいいのだが、夫や親戚、友人などをしきりにX道場に誘うようになった。

 

「あなたの家族が病気になったのは、悪い霊がたくさんついているからだ。すぐに除霊しなければ、あなた自身も不幸になる。あなただけではなく、家族みんなが不幸になる」

 

ハンドパワーの施術料もかさむ一方だ。
月々、10万円くらいは「浄化」に使っているだろうか。
夫の収入がそれなりにあるので、なんとかやりくりはしているのだけど、年間通して考えてみると結構な金額を費やしている。

 

「もうそろそろX道場へ通うのは、よしたほうがいいのではないか?」

 

夫が尋ねると、B子さんは目を吊り上げて怒り出した。

 

「せっかく元気になれたのに、今ここでやめてしまったらまた「うつ」に戻ってしまう。ここで引き返すわけにはいかない。もうあともどりはできない」