カルト宗教からの救出から社会復帰へのプロセス
入信してから脱会し社会復帰するまでのプロセスについてお話しします。
カルトメンバーの脱会支援はやはり時間がかかります。
長期に及ぶ時間の中で、カルトメンバーの心理状態もまた5つの階段を上がっていきます。
カルトメンバーが入信から脱会して社会復帰するまで、メンバーの心理は次の5つ階段を踏んで変化していきます。
@1段目の階段 拒絶期
A2段目の階段 交換条件期
B3段目の階段 無気力期
C4段目の階段 受容期
D5段目の階段 社会復帰
それぞれの階段ごとにカルトメンバーの心理状態と、家族の方の行動目標が違います。
以下に簡単にそれぞれの時期のコミュニケーションの目標と対応法のポイントを記します。
1段目の階段 拒絶期 (親しみと信頼の関係を作る段階)
この階段でのカルトメンバーの心理状態
カルト教団での活動が非常に魅力的で、やりがいを感じている時期。外部からのアドバイスに耳を貸す気はない。
本人のエネルギーは非常に高い。
この階段での家族の行動目標
・脱会説得にむけた基本的な戦略を理解する
・入信者の心理を理解する
・家庭内でのルールを作る
・父母の協力体制を作る
まず、行き詰ったコミュニケーションの回復をはかります。
@「おはよう」「お帰り」「おやすみなさい」という挨拶を励行します。
A教団の話をひとまず横において、世間話や日常会話などをしながら、本人とのコミュニケーションを取り戻していきます。
詳細については下記ページを参照してください
2段目の階段 交換条件期 (本人に教団に対しての疑問の種をまく段階)
この階段でのカルトメンバーの心理状態
一時の熱狂的な気持ちはやや醒めて、教団内部の人間関係や活動の厳しさが嫌になったり、教義や教団の活動に疑問感じることもある。
しかしカルト教団をやめる気はなく、活動は相変わらず続けている。
この時期は短い時間であれば、教団のありかたや教学について話をすることも可能
この階段での家族の行動目標
コミュニケーションがある程度回復できたところで、すこしづつ、入信している教団の活動や教義について話しをきき、論理矛盾や理解不能な言い分について問いただしていきます。
ただし、ごく少しづつです。一度に説得しようとしてもうまくいきません。
3段目の階段 無気力期 (集中的に情報を与える段階)
この階段でのカルトメンバーの心理状態
教団に幻滅し、やめたいと思うことが多々ある。
しかし教団を離れることの恐怖心や教団内の仲間と別れることが辛く、やめることができない。
「やめたい心」と「やめられない心」の葛藤があり、本人は非常に消耗し、本人のエネルギーは最も低い。
この階段での家族の行動目標
このタイミングでカウンセラーと面談し、教団に対しての情報(反社会性、教学の矛盾)などを集中的に与え、脱会を決断させる。
入信しておられる方への説得には専門カウンセラーが必要です。
本人の活動を観察していると、「いつも行っている教団の集会に行かなくなる」といった具合に、教団との距離を置き始める時期がやってきます。
この時期に「教団の反社会性」や「教義の矛盾」などを提示し、脱会を促します。
仏教系C教団
・オレは結局、家族とか友達とかを捨てきれなかった。
・活動や教学に疑問があって上の人にいろいろ相談しても「それは魔だ。勧誘うれば解決する」とか聞き飽きたことを言う。
・教団の本しか読むなって言われていて・・・だんだん勧誘が決まらなくなってきて上の人から文句を言われる。勧誘すると友達の中でうわさになるから遊ぶ相手も限定されちゃって。いいことないし、やめようと思ったんです。
しかしながら、この時期、本人は非常に大きな葛藤のなかにあり、非常に傷ついている可能性があります。
信じてきた組織や仲間を失う痛みがどれほどのものか・・・・
脱会へのゴールはもうすぐなのですが、家族の方は本人の「痛み」や「傷つき」にも配慮する必要があります。
詳細については下記ページを参照してください
4段目の階段 受容期 (脱会後の本人を精神的に支える段階)
この階段での元カルトメンバーの心理状態
「教団内部の仲間を失ってしまったという孤独感」
「多くの人たちに迷惑をかけてきたという罪悪感」
「未来への展望や目標を失ってしまった絶望感」
この階段での家族の行動目標
脱会後、本人は大きな傷つきを経験し、心身に不調をきたすことがあります。家族は落ち込む本人をささえていきます。
詳細は下記ページを参照してください。
5段目の階段 社会復帰 (本人の社会復帰を支える段階)
この階段での元カルトメンバーの心理状態
カルトでの体験になんとか折り合いをつけ、地域社会や職場の中でも居場所を見つけられている状態。
家族との関係も安定している。
地域社会や職場の中で居場所を作り、安定した社会生活を送っている状態。
この階段での家族の行動目標
本人の人生の選択を尊重する。親の期待を押し付けない。
「脱会すればすべてよし」というのではなく、ここがゴールの目安となります。
カルトメンバーを救出するにあたり、メンバーの心理状態が今、何段目の階段にいるのかを見極めることが非常に大切になってきます。
いま、メンバーの心が5つ階段の中で何段目にあるのか(2段目なのか、3段目なのかなど)、今対応するときのポイントはどこにあるのかを意識してみることが必要なのです。
たとえば1段目の拒絶期に「教団の反社会性」などを一生懸命話してみても関係をこじらせてしまいますが、3段目の無気力期に脱会に向かうアクションを起こさずに、教団の批判を控えていては脱会するタイミングを逸してしまいます。
どのタイミングでどの情報を出すのかが非常に重要です。
*「元信者の証言」は下記の文献より引用させていただきました。
「カルトからの回復」 櫻井義秀編 北海道大学出版会
「自立への苦闘」 全国統一教会被害者家族の会 編 教文館